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第29回朝食会「コミュニティとこれからの日本社会~都市・社会保障・科学」ご報告

開催日2010-07-28 ゲスト広井 良典 氏(千葉大学教授/当機構理事)

第29回朝食会「コミュニティとこれからの日本社会~都市・社会保障・科学」ご報告

2010年7月28日、第29回定例朝食会を開催いたしました。今回は千葉大学教授で当機構理事の広井良典氏にお越しいただき、社会保障や福祉社会の在り方、都市やコミュニティが果たすべき役割など、各国の様々な事例を交えてお話をいただきました。多くの方にご参加いただき、まことにありがとうございました。

おはようございます。ご紹介いただきました広井でございます。朝食会は久しぶりに参加いたしまして、朝早くからご参集されていることに感銘を受けております。話題提供ということでお話しさせていただければと思います。夏の朝というと、すがすがしものですが、今年は少し違いますね。今日は少し峠を越えたのか落ち着いてきていると思いますが。本日は、お手元の資料に即してお話しをさせていただこうと思います。

お手元の資料は、やや多いですが、10ページ程度のパワーポイントを打ち出したものと、カラーの表裏の資料があります。カラーの資料の写真は後で触れたいと思います。まずは白黒の資料の方からお話しします。

本日の内容ですが、一言でいえば、「コミュニティ」というテーマで話をしたいと思います。コミュニティは今後の日本を考える上で中心となる、非常に重要な切り口、概念になると考えています。コミュニティという概念は、色々なテーマが触れあう、一つの接点になる概念になると思います。今日のお話は、都市・社会保障・科学という副題をつけておりますが、特に本日は科学というものの在り方とコミュニティについてもお話ししたいと思います。

はじめに、資料の中の「経済システムの進化とコミュニティ」というタイトルのスライドをご参照いただきたいのですが、戦後の日本社会は、一言でいえば、農村から都市への人口大移動の歴史と言ってよいと思います。資料の左側には、伝統的社会「農村共同体」とありますが、これは文字通り「ムラ社会」でした。高度成長期を中心に経済成長を遂げながら都市に人が集まってきたわけですが、一番大きなコミュニティだったのが、会社と家族だったと思います。さらに言うと、それはいわば都市の中のムラ村社会、つまり、会社と家族というものが閉鎖的なコミュニティでもありましたが、それらが互いに競争しながら、経済成長につながる形で好循環の中で発展をとげてきました。
その後、経済が成熟するとともに、会社や家族が多様化・流動化していく中で、どのような形でコミュニティを考えていけばよいかという点が一つ大きなテーマになると思います。

配布資料の中に、「先進諸国における社会的孤立の状況」のグラフがありますが、残念なことに日本は一番右の方にありまして、社会的孤立の状況が強い。どうしてこういうことが起こるのかと考えると、次の「農村型コミュニケティと都市型コミュニティ」のスライドを見ていただきたいのですが、農村型コミュニティは、いわば、共同体・集団に個人が一体化するもので、都市型コミュニティは、独立した個人と個人のつながりのものです。日本は、稲作の長い歴史があり、農村型コミュニティとしての性格が強いと思います。それは、集団の内部では心地よい面を持つ一方、ともすれば、「ウチとソト」を区別するような閉鎖的な面もあります。急速に進んでいく都市化に、人々の行動様式が追い付いていない面があるのではないかと思います。個人と個人がつながるようなコミュニティを作っていくことが、これからの日本のテーマではないかと思うのです。

一方、「人口全体に占める『子ども・高齢者』の割合の推移」というスライドに子どもと高齢者の人口推移のグラフがありますが、一番上のU字(谷型)カーブを描いているのが子どもと高齢者を足した人口の推移です。現在を起点に前後100年くらいの長期を見ているグラフですが、人口全体にしめる割合は、これまで、一貫して減り続けてきたのですが、これからの50年は、一貫して増え続ける時期に入ります。
人生の中で地域とのかかわりが強い時期というのが、子どもと高齢者の時期です。ということは、これまでの時代は地域との関わりが強い人が一貫して減り続けた時期であったと言えますが、今後はそういう人たちが一貫して増え続ける時代になります。つまり、人口構造的にみても、地域というものが、いやがうえでも浮かび上がってくる時代になってくるということです。

かたや、現在、ソーシャルキャピタルという言葉(人と人とのつながりのあり方、アメリカの政治学者パットナムが広めたもの)が使われることが多いですが、健康とか教育の在り方とか、犯罪率とか、いろいろなことに影響をおよぼしているということが議論されています。「ソーシャルキャピタル(人と人とのつながりのあり方)と健康水準の相関」というスライドの中にあるグラフは、アメリカの50州をならべたものですが、ソーシャルキャピタルをある指標ではかると、それと心身の健康と深い関わりがあることがわかっています。

次のスライドでは、「GAH」という言葉を入れていますが、何を表すものかご存知でしょうか。荒川区が最近出している指標ですが、「グロス・アラカワ・ハピネス」という指標です。ブータンの、GNH(グロス・ナショナル・ハピネス)は既に有名ですが、それに対抗するものとして出されたものです。荒川区の区長が唱えたものですが、要するに、「地域の豊かさとは何か」ということを表したものです。地域のレベルに考えた場合、地域の豊かさとはどういったものであろうか、ということを少し広い視点で考えていく必要が出でいると思います。

全国信用金庫協会の例とありますが、今まで、信用金庫や地域金融というものはあまり視野に入っていなかったのですが、去年の秋に研究会で講演をした時に、こういう検討をしようとしていると示されたのがこの図でした。そもそも金融機関がこのような検討をはじめようとしていることが驚きでした。地域の豊かさとは何か、コミュニティとは何か、こういう検討を金融機関が始めているというのは、新しい時代の流れであると思います。豊かさとは何かということと、地域をユニットとして考えていること、その2点で、面白いと思っています。

次に、「社会保障とコミュニティ」に移ります。重要な点は、社会保障をこれから考えていくと、コミュニティというテーマに行きあたらざるをえないという点です。「社会的セーフティネットの構造」というスライドのピラミッドの図をご覧いただきたいのですが、今の社会でセーフティネットがどうなっているかという確認させていただきます。図の一番上は、現在の社会で、生活を行っていくには、雇用、仕事に就くということが第一条件になっているという意味でCの「雇用というセーフティネット」です。そして、働いている中で病気になったり高齢になったりした場合の制度としてBの「社会保険のセーフティネット」ということが出てきます。しかしそれは必ず、社会保険料を払い続けていたということが前提となっていますので、雇用とセットになっています。そして、最後のセーフティネットと言われているのは一番下のAの「生活保護のセーフティネット」です。

歴史的にみると、セーフティネットは、今言ったのと逆の順番で整備されてきたことが重要です。下の方から、まずはイギリスのエリザベス救貧法というものができて、生活保護のセーフティネットが作られました。その後、19世紀後半、工業化社会になる中で、ドイツのビスマルクと言う人がでてきて、事前に保険料を積み立てておいて備えるという、社会保険のセーフティネットが出てきました。救貧から防貧ということです。ところが、1929年に世界恐慌がおこり、雇用自体が確保できなくなっていきました。そうなると、政府が雇用自体を作らないといけないという考えになって、いわゆるケインズ政策と呼ばれる政策を通じて雇用創出、つまりピラミッドの一番上の構造を作るようになりました。つまり、社会的セーフティネットは、下から順に整備されてきて、これは「事後的な対応」から「事前的な対応」へ進化していったという流れがありました。

20世紀後半というのは、いわゆるケインズ主義的福祉国家が広がり、経済成長と社会保障の充実ということが車の両輪のような形で進んでいきました。しかし、それすら難しくなってきているのが現代です。1980年代から、福祉国家の危機と言われてきましたが、雇用自体が拡大を続けるという状況ではなくなり、先進諸国は共通して高い失業率に直面しています。そうなると一番上流にさかのぼった、事前的な対応が必要となってきます。そこで浮かび上がってくるのがまさに「コミュニティ」です。コミュニティそのものがセーフティネットという状況になってきているのです。

「これらかの社会保障の方向―全体として、「予防」的な政策へ―」というスライドをご覧いただきたいのですが、「事後から事前、つまり人生前半の社会保障へ」、「サービスないしケアの充実、つまり心理社会低ケアに関する社会保障」、「フローからストック、つまりストックに関する社会保障」、そしてこれまで十分に議論されてこなかった「都市政策・まちづくり・環境政策との統合」ということが重要になってくると考えています。これまでよりも“上流”に遡った、いわばコミュニティそのものにさかのぼった社会保障が必要とされるようになると思います。

資料が前後して恐縮ですが、「人生前半の社会保障」というテーマに移りたいと思います。今日の本題ではないので軽く触れますが、今までの社会保障では高齢者関係が中心でしたが、「年齢階級別失業率の年次推移」というスライドにあるグラフをご覧いただくと、高齢者よりも若者の失業率の方が高いという状態が顕著になっています。雇用が拡大を続けるという前提がかなり崩れてきている状況です。そうなると人生前半の支援が必要になってきますが、日本は、人生前半の社会保障、つまり教育などの公的支援が小さいということが別のグラフに示されています。人生前半の社会保障を充実させていくことと同時に、コミュニティ経済、商店街であるとか農業であるとか、それらは中間的労働市場と言われる時もありますが、それを地域のレベルで広げていくことがこのテーマにおいて重要なのではないかと思っています。

心理社会的ケアに関する社会保障についても重要になっていますが、時間の関係で飛ばします。

これまでの社会保障は、フロー中心に考えられてきましたが、これからはストックについても重要になると思います。一昨年くらいに、全国の市町村に対してアンケート調査を行いましたが、もっとも重要な課題として、空き地・空き家の問題が第1位でした。「土地・住宅に関する重要課題(市町村)」というスライドを見ていただくと、都市部では高齢者・低所得者の住宅確保という問題が最上位に挙がっています。先ほどから申しておりますように、社会保障を考える上で、住宅などストックも視野に入れて考えることが重要になってきます。そしてそれは、まちづくりやコミュニティにつながっていくと思います。

また、地域コミュニティ政策についての自治体アンケート調査というものを2007年に行いました。「コミュニティの中心として特に重要な場所は」という問いに対して、一位が学校と予想通りでしたが、二位が医療・福祉関連施設となっており、予想したよりも上位でした。これから高齢者の割合が増えていくと考えると、もっと大きくなってくるのではないでしょうか。地域コミュニティとの関わりが、医療機関にとってこれからはより重要な役割になってくると思います。

「地域コミュニティづくりにおける課題・ハードル」のスライドにありますように、課題と考えられているのは、「地域コミュニティへの関心が低い」、「会社(職場)への帰属意識が高く地域とのかかわりがうすい」等あがっていますが、一口に地域といっても、大都市と地方都市と農村部で様相が違っています。ソフト面・意識面をあげるというのは都市部の特徴で、中小規模の都市になってくると、「若者の流出や少子化等のために人口が減少している」や「地域経済が衰退し雇用機会が少ない」ということが課題の上位にあがってきます。

「『福祉(医療)地理学』という視点」というスライドをご覧ください。福祉(医療)地理学というと聞きなれない言葉ですが、コミュニティといっても、土地の特性によって課題は大きく異なります。例えば、高齢者ケアの在り方についても、郊外のニュータウンでは、都会型限界集落あるいは限界団地などと言われていますが、都市の高齢化の問題が大きくなっています。例えば、高島平団地で、大東文化大学の学生が入って世代間交流を進めたり、地域の世代間構成のバランスを高める試みが行われています。以前は、福祉や医療は、場所を超越した概念というのが大きかったのですが、これからは福祉や医療に、地理的・空間的な概念をいれていく、つまり“場所に返す”という視点が重要となると思います。

「まちづくりや都市政策の総合化」と資料にありますが、ヨーロッパなどでは高齢者がカフェや市場でゆったりと過ごすことが自然に見られます。日本は生産者中心で、スピードが速い街の作りになっていますが、ヨーロッパのような街づくりが、施設を作る事より重要な意味を持つこともあるのではないかと思います。まちづくりや都市政策と医療・福祉・社会保障が連動することが重要で、まちづくりや都市政策との総合化していくことが重要であると考えています。たとえば街の中心部に高齢者や子育て世代のための住宅、医療・福祉施設等を誘導的に整備することが、地域の再生にもつながるといった政策です。

また、最近関心があるテーマなのですが、コミュニティ感覚と空間構造が関係しているのではないかと思います。道路で分断されたような都市は、どうしてもコミュニティ意識が薄くなるような気がします。そういったコミュニティ感覚を意識した街づくりが重要になってくるのではないかと思います。

資料にある写真は私がとったものを並べたのですが、ヨーロッパ①の写真はヨーロッパの市場です。ヨーロッパ②は高齢者も歩いて過ごせる街を映しました。ヨーロッパ③は、歩いて楽しめる空間として、完全に自動車をシャットアウトして、歩いて楽しめるようになっている街を映しています。ヨーロッパ④は「エコ路地」で、路面電車の写真です。ヨーロッパ⑤は、先ほど、ストックという話をしましたが、住宅の写真です。地域活性化という視点で見る時、非常に重要になると思います。裏面の写真は中国の写真です。中国は、色々問題はあると思いますが、私から見てこれは良いなという点がありまして、社会主義ということもあり都市計画がきちんとなされています。一歩路地裏に入りますと、市場のようなにぎわいがあります。前から印象的でしたが、北京④の写真のように、高齢者がいっぱいいて、マージャンをしたりしています。これは、ひきこもりなどになりにくい要因になっているのかもしれません。北京⑤の写真は、大きな筆に水をつけて道端に絵を書いている人がいて、白髪のおばあさんが字を書いたり、子どもが字を書いたりしています。北京⑥は集合住宅です。住宅が、街づくりとあわせて考えられています。日本は都市計画が弱いわけですが、医療・社会保障と連動させていくことが大切だと思います。

最後に、科学・ケアとコミュニティというテーマに移りたいと思います。
ケアというものは、これまで1対1で考えられてきましたが、これからはコミュニティ、ソーシャルキャピタルという概念で考えないといけないと思います。
また、最近は、科学の研究自体がコミュニティという関わりの中で考えられるようになってきました。

1つ例を挙げますと、脳研究です。脳科学委員会という委員会に参加していますが、そこに出てくる一節があります。「(1)脳研究との関わり」というスライドをご覧ください。これまで脳というものは、個体に完結したものと考えられてきましたが、個体を超えたレベルで、脳がどう作用するかについての研究はいまだ端緒についたばかりということです。次のスライドに、「従来、こうした人間と社会や教育にかかわる問題に対するアプローチは、人文・社会科学的なものに限定されがちであったが、今後、自然科学の一学問領域としての脳科学の壁を打破し、人文・社会科学と融合した新しいアプローチが求められている」と言われており、まさにその通りだと思います。個体を超えたコミュニティ、人と人との相互作用といった視点が重要となります。

社会疫学とソーシャルキャピタルということで、色々な研究もはじまっています。健康の社会的決定要因ということでの研究もありますし、進化医学というものが90年代から出てきていますが、環境との相互作用について、環境と個体のずれが色々な病気の原因になっているという議論もあります。

まとめますと、科学とコミュニティということで、個体を超えたモデルの模索が、色々な異なる領域で同時進行的に進んでいると考えています。人間あるいは科学にとってコミュニティとは何かという非常におもしろい議論が起こってきています。そして、それと政策・制度とのかかわりはどうかという点も非常に面白いテーマであると思います。

クリエイティブ資本論というものがありますが、これからの資本主義というものは、場所やコミュニティということが重要になってくると言われています。コミュニティとクリエイティビティというのも面白いテーマと思います。

最後に、コミュニティというテーマを考えるには、究極的には、死といったテーマを含まざるを得ない。日本において、かつては神社とお寺などといったコミュニティが存在していました。現在、8万数千程度あるということですが、中学校は全国で約1万ですので、中学校区あたり平均8つずつという大変な数です。こういったものを医療・福祉・健康・環境などに活用するNPO団体などのうごきも出てきています。スピリチュアルという言葉もありますが、そういったものを含めてコミュニティを考えていくことも重要となってくると思います。

以上です。


(質問)
私のビジネスは生産性をあげたり、中間層をなくしたりするビジネスをしていますが、先生はどのようにITを位置付けていますか。どのような面にエネルギーを向けるのがよいとお考えですか。

(返答)
これからコミュニティを考えるにあたって、今すでにITやインターネットは不可欠な要素であると思いますし、逆にITが分散型というか、それぞれの地域に根差した活動を逆に促進すると思います。つまり、一見インターネットは場所という概念をなくしているようでいて、同時に、それぞれの人を場所に戻すというか、それぞれの場所をつないでいるという考えもあります。そういう補完的な役割もしているのではないかと考えています。


(質問)
ワークシェアリングや高齢の方の雇用という点でのお考えはありますか。

(返答)
一つは、人生の中のワークシェアリングが重要だと思います。ワークシェアリングという言葉には色々な意味があると思いますが、人生全体の中で仕事中心の時期と充電の時期をフレキシブルに組み合わせるということが重要になってくると思います。それは創造性や仕事の効率にプラスになると思います。つまり、ワークとライフの組み合わせを人生全体の中でフレキシブルに組み立てることができるということが重要と思います。
年齢に縛られて物を考えるのは問題だと思いますが、それぞれの年代のライフスタイルに固有の特徴があり、子どもや高齢者は、狭い意味での‘生産’から自由でいられる。そういった面はプラスの側面で、「生涯現役」というのはある意味賛成ですが、その現役という意味は、賃金労働というものだけに限られるのではなく、子どもと高齢者との交流、つまり生活の知恵や昔話など、自分の経験を若い世代に伝えるなどといった貢献・活躍の場があっても良いのではないかと思います。それがコミュニティというテーマにもつながると思います。


(質問)
コミュニティの中心として重要な場所について、学校の次に福祉・医療関連施設とあがっていましたが、病院に関しては、広義のNPOでありながらも、日本においては役割をまだ果たしていないのではないかと思います。医療を場所に戻すと考えると、在宅やコミュニティ・ケアということになるかと思いますが、病院が地域のコミュニティの場としての役割を担うにはどうすればよいか、具体的なアドバイスをご教示いただきたいです。

(返答)
コミュニティホスピタルという言葉が英語にはありますが、日本ではそのような伝統があまり強くなかったというのがあります。ですから実際にはそれをやるには限られてしまうかもしれませんが、医療機関の空間を地域の人にも開放したり、例えば、東京農大にいらっしゃる浅野房代先生がやられているように、ホスピタルガーデンのように、庭とか空間の一部を何らかの形で地域に活用するなどといった方法があると思います。
もう一つは、個々の患者と病院や医療者が1対1で向かい合うだけではなく、ケアを受ける人の横のつがなり、患者会を含めて色々あると思いますが、そういったものを含めてサポートするようなコミュニティづくりといった点でやれることもあるのではないかと思います。


(質問)
高齢化の進んだ地域に行く機会が多いが、どうしても地域の商業施設がなくなっていって、生活の場としての力を失うという現象をよく見かけるようになってきていますが、多極集中という考えでは、生活基盤を整えるための色々な資源が少なくなってしまうのではないかと思いますが。

(返答)
買い物難民についてのレポートが5月に経産省から出ましたが、推定600万人と言われています。商業施設が分散して、自動車で遠くに行かないと買えないなど、現代の街はそれ自体が拡散的な構造になっています。街の構造自体をかえなければ、高齢化に耐えられないと思います。
まだコンセプトの段階ですが、多極集中といって、多極化するのだけれど、単純に拡散するのではなく、地域ごとに拠点となる地域は集約型のものにするということが良いと考えています。それは医療や福祉といったテーマと結びついてくると考えられます。できるだけ中心部に医療や福祉施設を集約して作る。そのあたりをどうやって考えていくかが重要であると思います。つまり、都市政策と医療福祉政策を融合させていくということが非常に重要な考え方です。今まで両者は縦割りでしたが、それらをいかに融合していくかが課題だと思います。

(質問)
つくば市で都市計画の手伝いをしています。その中で、市民農園と自治会がコミュニティ活性化に役立つのではないかと興味を持っていますが、先生からコメントをいただきたいです。

(返答)
コミュニティガーデンなどの取り組みが起こってきているのと同時に、空き地空き家が増えているということが進行しているので、それを活用して、グリーンベルトなどを作るなどの動きがあります。自然とのかかわりを通じたケアという調査研究を以前行いましたが、非常に重要だと思います。自治会というのは、これまで古い時代の遺物といわれていることがありましたが、市町村へのアンケート調査では、コミュニティの主体として重要なのは、自治会や町内会という答えが上位を占めています。自治体のような地域コミュニティと、いわゆるテーマコミュニティといわれるNPOや企業がいかに連携していけるかという点が大きな課題であると思います。


(質問)
こういった領域は地域のニーズに即して行われるという面もあるが、ベストプラクティスを広げていくという大きな枠組みも必要かと思うが、どのような仕組みがうまくはたらくと思いますか。

(返答)
非常に重要な問題提起だと思います。ベストプラクティスが何かがまだ分かっていないというのが問題です。個別の成功例というものがあったりしますが、それを超えて、普遍的なモデルというものがまだ提示されていません。以前、地域再生関係の社会起業家の方と話す機会がありましたが、まだ地域再生という領域において、どうすればうまくやっていけるのかといったモデルが見えないという話になりました。これまで日本は「ナショナルレベル」をユニットにして考えてきましたが、「ローカルユニット」では見てこなかった。今後は、ローカルなユニットに視点を移し、地域で循環するモデルを作っていくことが課題であると思います。

 
 

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