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第31回朝食会開催報告

開催日2011-03-30

第31回朝食会開催報告

2011330日、第31回定例朝食会を開催し、当機構代表理事の黒川清により、「医療政策から健康政策へ」について講演を行いました。「高齢社会」「慢性疾患の増加」「貧富の差の拡大」「財政状況の逼迫」などを背景として、医療政策をとりまく環境が従来の医療の枠組みから発展・拡大している中、ひとりひとりが健康に暮らす持続可能な社会の実現に向けて、将来を見据えた新たな社会制度設計が求められています。各分野のリーダーの意識改革により、どのように新たな日本を構築していくか、を考えました。

<講演録>

黒川

今回は、もうじき新年度を迎えるにあたり、お話させていただきます。311日におこった東北関東大地震及び津波は甚大な被害をもたらし、原発事故は依然として終息の気配がみえません。原発の現場の方は非常に努力しておられるが、東京電力の会見については、失望と批判の声が聞かれます。いまや、東京電力、枝野官房長官の記者会見が、ブログやツイッターであっという間にグローバルに広がる世の中です。現場の方はがんばっておられるが、東電、政府は後手後手の対応に終始し、機能不全に陥っていることの印象はぬぐえません。東電、政府の記者会見も二転三転し、想定していないことは想定外、と言って逃げ、リスクマネジメントの最悪のやり方になってしまっています。私は、原発から煙が出たと報道された瞬間に、厚労省に電話をして、日本のヨウ素備蓄は何人分あるか、すぐに大枠を調べてほしいと依頼しました。総合的に何をすべきか、ロジカルに考え、対応を予測することが重要です。大きな枠組みで、「自分の組織」をはなれて俯瞰的に見ずに、自分のところから考えると視野が狭くなり、対応が後手になるのです。

しかしながら、この「311日」、Three Eleven、「3.11」という非常事態は、日本を変える大きなチャンスでもあるのです。「復旧」ではなく、新しい日本へと変革の時なのです。皆さんがGovernment of the people, by the people, for the peopleを考える機会なのです。政府を批判的に分析することは大事ですが、一人ひとりが何をすべきか考えることが重要です。今こそ、リーダーがリーダーシップをとらなければ、今までの日本に戻ってしまいます。あなた方は医療の専門家として見られているのですから、社会から見た自分が、どのような発言をし、どのような行動をすべきかをよく考えてください。自分の立場で何ができるか、グローバルな世界の中の日本の強み、弱みは何なのか。自分の発言が「他人の目で」、「外からの目で」みてjustifyされていると考えているでしょうか。責任あるポストの人は、その社会的ポストとして適切なことを言っているか、強く意識すべきです。普段から社会の中の自分の役割を意識し、行動し、自分のポストで責任を果たしていない限り、いざという時に他者の信頼を得て、自ら責任ある行動をとることは不可能なのです。

さて、2枚の資料をご覧ください。(PDF資料別途ウェブサイトに掲載)

先進国の「医療制度」は総じて次の4つの課題に直面しています。

1.   高齢社会

2.   生活習慣病の増加

3.   貧富の差の拡大

4.   国の負債の急増

高齢社会を迎え、日本の人口の23%が65歳以上の高齢者です。そして、ライフスタイルの変化に伴い、生活習慣病を抱える人も、増加の一途をたどっています。加えて、貧富の差の拡大、国の負債の急増など、極めて厳しい状況の中、現役世代でどのように社会保障を支えるか、が大きな課題となっています。

50年前、日本での「医療」の課題は感染症(結核・肺炎)や高血圧と脳血管疾患、がんの患者が中心でした。多くの人は自宅で死を迎え、病院などの医療機関で死ぬのは30%に過ぎませんでした。しかし、時代は大きく変わり、心疾患、がん、脳血管疾患に加えて、糖尿病や高血圧、高脂血症などの慢性疾患が増加し、病院などの医療施設で死を迎える人が85%となっています。限りある財源と人材で、この広範な「医療」の領域をカバーすることは不可能です。「健康」という、人間が生きる上で最大の関心事のひとつに対し、社会の様々なステークホルダーと協力し、この課題を解決していく必要があるのです。「医療」というと、医療関係者が頭に浮かびますが、この課題は医療のみならず、社会構造全体の変革と国民の意識変革なしには解決できないのです。以下の変革へのキーワードをもとに、大きな枠組みで捉え、多様なステークホルダーとともに、解決すべきなのです。

<変革へのキーワード>

・透明性

・コミュニティー発想

・生活者・患者の視点

・費用対効果と動機づけ

・健康と社会経済要因

・病院外でのヘルスケア

ITの活用

・支払制度の見直し

・社会企業家の活躍

・医療提供体制の再考

例えば、費用対効果と動機づけですが、医師が足りないと言う前に、複数ある病院を一つにまとめて基幹病院を設置し、そこを24時間オープンシステムにして、患者を受け入れることはできないでしょうか。病院は英語でホスピタルですが、ホテルが提供するのは、ベッドと食事と看護師と検査機器であって、患者とかかりつけ医が一緒に病院を利用に来ることも考えられるでしょう。また、各病院の役割を明確にすることも必要でしょう。私は、特に大都会の大学病院は外来をやめればよいと思っています。大学病院の社会的ミッションを再考すべきではないでしょうか。全てを公的資金で賄うことはもはや不可能です。規制緩和をしながら、国がやるべきことは何なのかを考えなくてはいけません。

私は、「医療政策」ではなく、「健康政策」と言いたいと思います。「Medical Policy」ではなく、「Health Policy」です。私は、名称を変え、新たな言葉が一般の人たちに与える印象は重要だと思っています。医療の枠組みは広がっており、もはや医療従事者は、すべてに責任をもつことはできなくなっています。医療従事者がフォーカスすべき点を明確にしつつ、他のステークホルダーと協働し、社会制度システム全体を変えていく必要があります。中央集権的ではなく、地域中心へ、公的部分を明確にしつつマーケットメカニズム、個人的インセンティブに基づき、そしてグローバル社会のパートナーであるべき日本を意識しながら対応することが重要です。

最後に、1日のうち、脳の活動の5-10パーセントを、将来のあるべき社会の中で今の自分が何をできるか、考えてください。それが、Three Eleven、「3.11」以後、新たな日本を創る原動力となるのです。

ありがとうございました。

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31回朝食会

スピーカー:日本医療政策機構 代表理事 黒川 清

日時:2011330日(水)800900

場所:WIRED CAFE(日本橋三井タワー2階)

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                                        <了>

 
 

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